送られてきた道具の中に、長台の寸八が3丁ありました。
見た目随分手を取られそうだったので後回しにしようと
思っていたのですが、試しに1丁だけつついてみました。
左がその鉋。右は手を入れていない1枚刃の奴です。
左のも元の姿は右のと同様の年季の入った姿でした。
手を入れる前に試しに削ってみてびっくり。
ちゃんと削れてしまうんです。当然狂っていると思い込んでいた
下端は、手を入れる必要がほとんどありませんでした。
刃も、最近研いだ筈はないんですが、なぜか錆1つなかったです。
工房の埃や汚れに保護されていたんでしょうか。
槌で叩かれてヘタっていた頭をグラインダーで削り、錆の浮きかけていた
替え先から上の部分をワイヤーブラシで掃除して、研ぎ直して
あげました。
銘は「白鶴」、鍛冶は「克明」と読めます。白造り?の華麗な刃でした。
ただし、替え先から先は4センチ弱しか残っていません。
研いだ後再度削りのテストをしましたが、「とっても切れます」。
長台で重いのですが、引きが抜群に軽いです。
刃先角はなんと30度。堅木用に立ててあったようですが、
それでも今までにない軽さです。
表なじみが緩んでいて、刃の出代調整がうまくいかないので、
紙を貼ってから最終の評価をしてみようと思いますが、
この鉋、いいかもしれません。
こちらは1枚仕立ての方の刃。「重春」。
左下に「苦心名残」と刻印されています。
多少錆が浮いており、裏切れ寸前でしたので、研ぐ前に裏出し。
2丁とも片出の癖があり、片方の肩だけ槌で叩かれてヘタって
めくれています。
片出は直さないまま、強引に槌で叩いて使われていたようですが、
刃の出代調整が難しいので直しておきました。
表側ですが、裏出しの槌跡が鎬面より上に付いています。
丁度境目あたりを叩いていたようです。
ここを叩くという人はあまりいないようですが、
これで上手くいくなら誤って刃先を叩く確率は低くなるし、
少し強めに叩けそうなので真似してみましたが、なるほど
ちゃんと出てきました。
裏は出たんですが問題が一つ。裏を押していて気づいていましたが、
刃先中央部が1センチぐらい、表側に歪んでいるのです。
何故そうなったかはわかりませんが、修正に時間がかかりました。
こっちの鉋も表なじみが緩くなっており、ハガキを貼り付けて
修正の必要があります。
台は買った時のまま、36mmの厚さになっていたので、30mmまで
落として、持ちやすくしてあげました。
3丁のうち最後の残しておいた2枚仕立ての鉋ですが、これは一目で
厄介だと思ったので後、後回しにしたんです。
1. 下端がかなり狂っている。
2. ほかに比べて片出の程度が甚だしいが、そのまま使った形跡がある。
3. 刃こぼれが肉眼ではっきり確認できるだけで5か所放置されている。
4. 刃口が2mm以上開いている。
5. 本刃、裏金とも歪んでいたり、変な場所を鑢で擦った跡が残って
いる。
どうも、他の2丁に比べておかしな処が多すぎるのです。
同じ人が使っていたとは思えない点がいくつかありました・
リペアしてみての感想ですが、この鉋は9割がた他の人の物です。
使えるようにするには、相当な労力と思い切りが要るようです。
まずは口埋めから。 小鉋はチェリーの木口表でやったのですが、
濃い色だと刃先確認が難しいので、今回は台と同じ白樫の薄板で、
柾目なりに埋めます。
埋める板は掘り込みより約1mm厚めのものを使います。
この写真でもわかるのですが、刃口両サイドの掘り込みが、
他の2丁と比べて狭くて深いです。
こういう場所は人によって癖ってものが出やすいので、
ここも同じ人の鉋とは思えない点です。
他のもそうですが、表なじみが緩んでしまっています。
すでに紙を貼って調整したようですが、日付は平成9年
ですから、それ以降調整したはずです。
それでもユルユルになっていますので、一度この紙を剥がして
新しくハガキを挟んでみます。
刃は、もう1丁の2枚台と同じ「白鶴」銘「克明」作の刃です。
この鉋刃を永年使ってみて、最初のが寿命近くなったので
同じものを新調したのでしょうか。
刃の長さからして、それほど使い込んだものではないのですが、
すでに両脚部分が酷く拡がっています。
右耳部分刃先側4センチに変な影が見えますよね。
反対側にもあるんですが、グラインダーか鑢で耳を部分的に
薄くしたようです。
裏金もちょっと納得できません。
刃先がボロボロになっています。よく見るとかなり荒目の鑢あと
があり、刃先がガタガタに欠けた状態です
逆側から見るとこういう状態です。
相当酷い状態で、一度の研ぎでは回復しないでしょう。
研ぎ直した刃裏です。 荒っぽく中高のアーチ状に研いであった
のですが、それ以上に両耳の部分が気になります。
新調した時に刃が入って行かないので落としたんでしょうか?
そういうやり方は聞いたことがないけどなあ。
研ぎ直した裏金です。歪があって苦労させられました。
今回はここまでにしておきます。
3丁の長台を都合3日掛で何とかリペア終了。1日で左の2丁、
右の1丁に2日掛かった感じです。
いずれももう少し追い込みたいのですが、梅雨時、台が動く
可能性大なので、暫くこのまま様子をみることにします。
次回作の準備をしておきましょう。
木工を始めて熱病状態だった頃に入手したタモ材を出して
きました。
「タモ梱包材1立米=14万」の材です。 導管の太さに
辟易して、材木置き場に埋もれていました。
要するに、製材した時に出た規格寸法外の端材を1立米分
格安で売ってた奴です。いわばパンの切り落とし、または
茎わかめみたいなものです。
次回作は、この1立米をフル活用して、作業台三郎と、
受注品の「武骨で、存在感があって、ビクともしない丈夫な
作業テーブル」を作ります。
今までに作った事のない「大物」になりそなので、
体力が心配ではあるのですが。
廊下の一番奥のスペースにあったのですが、ここから引きずり出して
やりました。
さっきの写真のは、「梱包材」の中で一番長尺の2m物です。
更に階段下に置いてある1m物も動員しますが、それは次回
ということにします。
ごきげんよう。
PS
帰宅するとこんなものが届いていました。
中身は後日UPします。
KWGさん、重ね重ねありがとうございました。